造影剤腎症って本当にあるの?update〜その①:定義など〜

みなさま

腎機能が悪い患者さんに造影CTをオーダーするのにためらいがありませんか?僕は、必要性が高ければの前提ですが、正直あまりためらいがありません。ここでは、3つに分けて造影剤腎症のお話をします。

造影剤腎症(Contrast-induced Nephropathy; CIN)の定義
造影剤を使ってからおこる腎臓の障害のことをCIN、ないしはPost-Contrast Acute Kidney Injury(PK-AKI)と言いますが、「どの程度悪化するとCINというの?」という点は重要です。それを定義するには、「造影剤を使ってから腎機能が悪化することは、その先に死亡率上昇があるか?(いわば『健康を害するか?』)」という点がとても大事だと思います。
文献1(Am J Cardiol . 2008 Mar 15;101(6):812-9.)は、PCI(Percutaneous Coronary Intervention)をしたあとの造影剤腎症について検討したものですが、半年後の複合心血管イベント・1年後の総死亡率と相関する因子は何か?について検討しました。
①25% increase from baseline sCr
②SCr of ≥0.5 mg/dl (≥ 44 mmol/l)
の2つが関わることが判明しました。ただしこれはあくまでPCIを行う患者群における評価ですので、一般的な患者に当てはまるかどうかは不明確です。
これらより以降、KDIGO(Kidney Disease : Improving Global Outcomes)という世界的な腎臓疾患団体からは、造影剤使用後に下記のような定義を元にした悪化があった場合をCINと定義しています(文献2:Nephrol Dial Transplant . 2012 Dec;27(12):4263-72.)。Stage別の分類です。

ちなみに、造影剤腎症の発症が本当に死亡率と関与するか?については議論があります。先程の後方視的研究では死亡率上昇が示唆されていましたが、2013年に出たsystematic review & meta-analyssisからは、この結果を覆すデータが出つつあります(文献3:Radiology . 2013 Apr;267(1):119-28.)。
2011年9月時点までに出た造影剤腎症について評価した13研究のmetaanaysisでは、下記の図の通り、
・AKI発症率
・造影剤使用後の透析導入
・造影剤使用後の死亡
について明らかな差がなかったと報告しています。

また別スレッドで後述しますが、すでに10年弱前から、造影剤腎症についてはそのリスクそのものが疑問視されている経過があるのです。
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