僕が一般的な感冒薬を処方しない理由についてまとめてみた(AFP2019)

僕は基本的に感冒(Common cold)の患者に「いわゆる」感冒薬(PL顆粒Ⓡなどの総合感冒薬、せきどめ、去痰剤などなど)を処方しないようにしています。

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①感冒において、症状を減弱させる処方薬は少ない!
少ないながら入院・死亡含めた有害事象が日本で
 報告されている!!
③患者とはshare-decision makingを!しっかり説明すれば
 処方不要だなと理解してくださる方も、多い思います!!!
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処方しない理由は下記2つからです。

1)効果が証明された薬剤/非薬剤治療があまり存在しない(が、2012年時点と比べると増えた:別項で後述)。

現在は21世紀であり、下手するとドラえもんが出てくる時代のはずですが、この21世紀においても、「症状の期間を短くすることが証明された」感冒薬はごく少数です。

American Family Physicianの感冒薬に対するreviewが2019年にupdateされました(文献:Am Fam Physician. 2019 Sep 1;100(5):281-289.)。成人・小児においてeffective agentとして報告されているのは下記の通りです。しかも、その効果はそれぞれの薬剤によってかなり限定的な部分においてのみであり、「処方したら症状が全てよくなる!」と言うわけでは全くありません。いくつかの研究ではplaceboでもよくなっていますし、日本では使用不可能な薬剤も含まれます。となると、感冒薬の効果はかなり限定的です。。。

一方、感冒に対して効果が証明されていない薬剤もあります。その代表格は抗菌薬、鎮咳薬(コデイン含む)です。効果がないこと(そして効果がない処方薬が漫然と使われている状況があること)はとっても残念です。。。

2)少ないながら死亡もふくめた有害事象が日本の報告で存在している
2009年−2013年における消費者庁のデータがあります(https://www.city.kunitachi.tokyo.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/44/150408kouhyou_1.pdf)。
薬局やドラッグストア、インターネットなどで購入でき る感冒薬などの一般用医薬品において、1225件の入院が発生しています。このうち、感冒薬として処方しうる「総合感冒薬」「解熱消炎鎮痛薬」「漢方薬剤」「耳鼻科用薬」「鎮咳去痰剤」は1225件中900件あります。
このうち、死亡症例は15件発生していて、そのうち感冒で使いうる薬剤は14例です!
こういう背景から、
・飲んでも効果が乏しい
・(数としては少ないながら)副作用で死亡例も報告されている
薬剤を、使いたいと先生方は思いますか??
と、問いたいのです。
もちろん、こういった疫学的データを全ての患者さんに外挿出来るか?という問題はありますが、これらの内容を患者さんと話し合うと、僕の印象では5割くらいの患者さんが「じゃ、しっかりご飯食べます」とおっしゃいます。
例えば下記のような患者さんには本気で処方のメリットデメリットを話し合います(処方することすらあります)。
・歯科衛生士で、咳をしたら患者さんに唾が飛ぶかもしれない
・脳外科医で脳腫瘍の手術をするときに咳を止めないと、手術ミスを生じさせかねない
・コンサートを控えた歌手で、咳ばかりすると講演の評判に支障が出る
・明日受験だ
ですが、「基本的には感冒薬は処方しない!」というスタンスが妥当と思われます。
Take home messageです。
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①感冒において、症状を減弱させる処方薬は少ない!
少ないながら入院・死亡含めた有害事象が日本で
 報告されている!!
③患者とはshare-decision makingを!しっかり説明すれば
 処方不要だなと理解してくださる方も、多い思います!!!
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