歯磨き後/抜歯後の血液培養の陽性率は?についてまとめてみた

カンファレンスでMSSA菌血症+椎体炎の患者さんのプレゼンテーションがありました。侵入門戸は不明ですが、抜歯の病歴がありました。

「歯を抜いた後に血液培養陽性になるのか?」という疑問について一定の回答を提示します。
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1)歯科治療が必要そうな患者の歯磨きでは、
  心内膜炎の原因微生物となりそうな菌血症が
  2割程度起こりうる
2)歯科治療が不要ないしは不明確な患者の歯磨きでは、
  起こらないことも多い
 (おこるかもなと思っておいて悪くないけれど)
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P:研究者の単施設において救急外来に受診し、「1本以上抜歯が必要」と判断された病変を有する患者
除外基準は下記の通りです。
・歯が10本未満
・ 過去2週間以内の抗生物質の使用
・診療ガイドラインに基づく抗菌薬予防の必要性(人工弁の存在など)
・活動性ウイルス性疾患
・制御が不十分な全身性疾患
・ペニシリンアレルギーの病歴
・体温>100.5°F(38.3℃)
・顔面蜂巣炎
・研究前1時間以内の歯肉組織の操作(例:咀嚼、歯磨き)
I/C:3群に分ける
①歯磨きのみ
②抜歯+Amoc-Cluv予防内服群
③抜歯+Placebo内服群
O:カテーテル留置でライン確保したのち、処置前後で血液培養を6回(1セットずつ)取得し、その陽性率を比較する
というかなりExtreme(だけど臨床現場のQuestionを明確に解決できる手法を用いてる)な内容の研究です。ルート確保して6回血液培養採取するって凄くないですか?6セット取られるのは僕も正直嫌です。。。
んで、患者のinclusionの流れになります。600人が登録され、290名が研究に協力する!というなかなかすばらしい状況になっています。そのうち6セット完遂できたのは257名(88.6%)という状態です。すごいですね。。。
結果ですが、下記の通りです。
①血液培養陽性頻度(コンタミ起こしやすい微生物かどうかは別)
 ・1回目(処置前)の血液培養は全て陰性
 ・歯磨き群:32%
 ・抗菌薬予防投薬群:56%
 ・抜歯後プラセボ群:80%
②IEに関連すると思われる微生物が検出される頻度
 ・歯磨き群:23%
 ・抗菌薬予防投薬群:33%
 ・抜歯後プラセボ群:60
微生物の種類と頻度は下記の通りです。いろいろな微生物が検出されていますが、すくなくともS.aureusは検出されていません。
ただし、この表の中には
・CNSなどの表皮常在菌
S. malrtphiliaなど院内耐性菌
などもカウントされていますが、これらがコンタミネーションである可能性はやはり残るかと思われます。
なので、「抜歯が必要な問題を抱える患者」において、
・歯磨きだと血液培養陽性率が2−3割程度
・抜歯後抗菌薬投与していなければ6−8割程度
血液培養が陽性となる可能性がある。
と言えます。
一方、抜歯が必要な状況か否かにかかわらず歯磨きはするわけで、その血液培養陽性率は不明確です。これについては過去の報告は少ないですが、2005年に報告があります。
論文② Am J Med Sci . 2005 Apr;329(4):178-80. 
軍のサポートを受けて生活している健康な30人(平均年齢29歳:rangeは24-41歳)に対して歯ブラシ前1セット・30秒後1セット・20分後1セット
の計3セット(6ボトル)の血液培養を取得して5日間培養した際の菌の検出を見た報告があります。ざんねんながら歯周病の有無や抜歯の必要性の有無は記載がありません。これら180ボトル中、わずか3本からPropionibacterium acnes(現在の名前はCutibacterium acnes)が検出されたのみで、これらは皮膚常在菌であることから真の菌血症とはなっていない!という報告が出されています。
この論文には過去の報告のまとめも載っていて、陽性の報告にはかなりばらつきがありますが、血液培養陽性率は0-44%とかなりバラバラです。
以上より、基本的には下記のことが言えそうです。
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1)歯科治療が必要そうな患者の歯磨きでは、
  心内膜炎の原因微生物となりそうな菌血症が
  2割程度起こりうる
2)歯科治療が不要ないしは不明確な患者の歯磨きでは、
  起こらないことも多い
 (おこるかもなと思っておいて悪くないけれど)
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