Campylobacter fetus infectionについてまとめてみた

みなさま
というわけでここまで長かったですが(汗)、この項のメインの議論となるCampylobacter fetus infectionです。
1)Campylobacter fetus:微生物学・病態・リスク因子
Campylobacter fetus は、髄膜炎・椎体炎・脳膿瘍・感染性流産、そして菌血症の原因微生物となることがあります。(文献1:Heliyon . 2019 Nov 14;5(11):e02814.)
ちなみに「fetus」とは「胎児」という意味です。C. fetusは動物の感染微生物として最もよく認識されています。C. fetus subsp. venerealisはウシの生殖器管に感染し、不妊や流産の原因となることがあります 。人間でも1947年にC. fetusによる感染症で中絶に至った症例があるようですのでびっくりしますね。。。一方、C. fetus subsp fetusの主な感染ルートはウシとヒツジの消化管です(文献2:Clin Infect Dis . 2014 Jun;58(11):1579-86.)。
Campylobacter fetus infectionの感染巣については、24%~41%程度で他症状の乏しい菌血症で発症し、そのほかにも神経感染(髄膜炎、髄膜脳炎、硬膜下膿瘍、脳膿瘍)、骨髄炎、肺膿瘍、関節炎、周産期感染(例:子宮内感染、流産、胎盤炎)などが報告されているようです。(文献2:Clin Infect Dis . 2014 Jun;58(11):1579-86.)
形態学的には「C. fetusは 形態学的にもC. jejuniなどと異なって, らせんの波長が長いし,」などという記載があるものもみられますが(文献3. 日本細菌学雑誌 40(3), 563-580, 1985.)、我々が経験した症例の血液培養グラム染色をみても、あんまり区別つかないなーというのが実感です。まんなかあたりにいるgull wing が見えますでしょうか?
Campylobacter fetus infectionがどのようなリスク因子を有する患者に生じるか?ということについてはある程度わかっています。
①高齢者と入院を必要とする疾患
フランスのCampylobacterとHelicobacterのためのNational Reference Centre (NRC) から得られた2003年から201年までの 22,244検体(フランス全土の4分の1程度のcaseがあつまる)の検討では、Campylobacter属関連の微生物の分布は下記のようになります。(文献4:J Clin Microbiol . 2014 Jan;52(1):328-30.  )
Campylobacter以外の微生物の記載があるのは、どれも発育させる培地がよく似ているからです。また発育性がすこし悪いことも一般的な特徴になります。
Table 2の下側を見ていただくとわかりますが、Thermotolerant CampylobacterCampylobacter jejuni, C. coli, C. lari, および C. upsaliensis)とCampylobacter fetusを比べると
・年齢(高い方がfetus)
・入院(入院する方がfetus)
・培養材料(便以外から生えるのがfetus)
・夏(夏以外に発症するのがfetus)
がリスク因子とされます。
その他、免疫抑制状態(ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、血液悪性腫瘍、脾臓摘出など)、弁膜異常を伴う心血管疾患、肝疾患(アルコール依存症による肝硬変など)、糖尿病、医療機器の埋め込みなどもリスクと記載がありますが(文献2:Clin Infect Dis . 2014 Jun;58(11):1579-86.)、その具体的な数字は検索できませんでした。
1)Campylobacter fetus:治療
治療は抗菌薬投与となります。前述のCampylobacter jejuni/coliとくらべて菌血症の頻度が明らかに高いこと、免疫抑制状態や高齢者に発生しやすいこと、死亡率が高いことがその理由と思われます。
感受性データについては少ないながらいくつか報告があります。
①1983-2000年にカナダのケベック州で111株検出されたCampylobacter fetusの感受性は以下の通りです(文献5:J Clin Microbiol . 2003 Jan;41(1):463-6.  )。
ベータラクタム系とキノロンはだいたい感受性ありで、テトラサイクリンとエリスロマイシンは厳しいです。
②ベルギーから報告されたNon-jejuni/coli Campylobacterの感受性についての報告です(文献6:J Antimicrob Chemother . 2006 May;57(5):908-13. ) 。Campylobacter fetusは11株のみ検出されていますが、一応ここのパネルに乗っているものとしてはナリジクス酸以外はAmpicillinもGentamycinもCiprofloxacinもTetracyclineもErythromycinも、全部OKです。
③一方、台湾国立大学にて1998-2008に検出されたから報告されているCampylobacter fetus 6株における感受性は下記の通りで、ABPC/SBTで83.3%(6株中1株で耐性)、Ertapenemは16.7%(6株中5株で耐性),
Ciprofloxacinで50%(6株中3株で耐性)、Levofloxacinで66.7%(6株中2株で耐性)と報告されています(文献7:J Infect . 2012 Nov;65(5):392-9. )
④スペインの1750床の教育病院(でかい!!)における1985 -2007年までに検出され、phenotypeまで判明したCampylobacter fetus 8株の感受性も下記の通りで、アモキシシリン・クラブラン酸でもいけそうな気配です。(文献8:Medicine (Baltimore) . 2010 Sep;89(5):319-330. )
Sanford guideⓇのfirst line ABxはカルバペネムになっていますが、正直なところAmpicillinでいいのではないかというのが僕自身の見解です。
というわけで、Take home messageは下記の通りです。
1)Campylobacter fetus はjejuni/coliと違って菌血症や髄膜炎・膿瘍など深部感染が多い!
2)「fetus」は胎児という意味!牛の生殖器ないしは牛・羊の消化管に存在する!
3)高齢、免疫不全、などがリスク因子!
4)抗菌薬は、非重症ならABPCでOK!逆にキノロンやマクロライドは避けたほうがいい
以上です!編集長!!
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