高アンモニア血症:後編です。
代謝異常はよくわからないーと思うので、これを機にまとめてみました。
高アンモニア血症の鑑別表を再掲します(Am J Med . 2010 Oct;123(10):885-91.)。判断のフローを見ていきましょう。
なかなか難しかったので、ひっさびさにネルソンを読んでいました。いやーこれを人生でまた読むとは思ってませんでした。。。(Priya S. Kishnani, et al. Defects in Metabolism of Carbohydrates. Nelson Textbook of Pediatrics, Chapter 105, 777-806.e1)。
1)アシドーシスか否か?
全身の代謝障害(その誘因は敗血症でも心不全でも腎不全でもなんでもOK)でのacidemiaがあれば、アンモニア上昇は起こります。また、先天性ピルビン酸代謝異常症でもアシドーシスが起こり、アンモニア上昇をきたすようです。
2)低血糖か否か?
アシドーシスがなければ、次は血糖評価です。脂肪酸のミトコンドリアへの転送のためのカルニチン回路、および脂肪酸β酸化系 における先天性代謝異常がある場合、カルニチン欠乏をきたして低血糖と高アンモニア血症をきたします。
3)血清アミノ酸分析はどうか?
アシドーシスがなく、低血糖がなければ、尿素サイクルの異常がないかどうか評価する目的で血清アミノ酸分析を行います。
①シトルリン上昇+アルギニノコハク酸上昇→アルギニノコハク酸尿症
②シトルリン上昇+アルギニノコハク酸正常or低値→シトルリン血症
③シトルリン正常or低値→次のフェーズへ!
という流れになります。
ちなみに、BMLでは40種類のアミノ酸分析ができ、その中にアルギニノコハク酸が含まれています。SRLでは41種類のアミノ酸分析ができ、その中にはシトルリンが含まれているようです。日本の実臨床的にはこの組み合わせで評価するか、まあ代謝専門小児科医に相談ですかね、、、
4)オロト酸はどうか?(てゆか、オロト酸ってなに?)
オロト酸とは、グルタミン、炭酸水素イオン、アスパラギン酸から生じた六員環を酸化したもののようで、ピリジンヌクレオチド生合成の中間体であるとされます。これにホスホリボシルピロリン酸のホスホリボシル基を転移して、ヌクレオチド(塩基+糖+リン酸の構造をもつ化合物で、核酸を構成する構造単位)とするようです。
①尿中オロト酸上昇→オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症
②尿中オロト酸正常→カルバミルリン酸合成酵素 (CPS-I)欠損症
という判断になるようです。オロト酸は尿中からの排泄亢進をもとに評価するようで、「有機酸スクリーニング絵検査(SRL)」で検査可能なようです
(これらは新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2015を参考にしました)。
最後に、尿素サイクルの一覧と、各酵素が欠乏した際に影響を及ぼす部位を一覧で示します。
Take home messageは下記です。
高アンモニア血症の患者さんをみて、代謝異常を疑ったら
1)アシドーシスはないか?
2)低血糖はないか?
3)血清アミノ酸分析はどうか?
4)尿中オロト酸はどうか?
をもとに分析を進めよう!
いやー、これは結構勉強になりました!!将来こんな診断ができればとは思いますが、、、まあけど患者さんの健康が一番ですね。。。