Campylobacter jejuni/coli infectionのつづきです。下記がまとめです。
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①急な発熱のみの場合に、campylobacter colitisは
頭をかすめておく。生肉摂取の病歴取得を忘れないこと!
②便のグラム染色でGullwingが見えたらcampyloba cter!
③抗菌薬治療は重症者や高齢者・妊娠・ 免疫不全者では
考慮するが、それ以外であれば抗菌薬は不要
(ただし状況に合わせて考慮)
④便グラム染色でgullwingが見えていないのに
抗菌薬で治療す るのは危険
サルモネラは排菌期間延長!EHECはHUSリスク上昇!
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3)Campylobacter jejuni/coli infectionの一般的な病歴と診 断方法
これは有名な話ですが、Campylobacter jejuni/coli infectionの一番最初の症状は 「悪寒戦慄」です(Clinical manifestations, diagnosis, and treatment of Campylobacter infection. uptodate 2021改変)。
uptodateの表を改変したものですが、 基本的に発熱は下痢腹痛に先行して起こります。
実は僕自身も過去3回 Campylobacter jejuni/coli infectionを起こしたことがあ りますが、どの病歴も「がたがたぶるぶる震える」 が主症状でした。ここでの学びは、「急な発熱」「悪寒戦慄」 以外に症状がない場合にも生肉・焼き鳥・焼肉曝露を確認し、 食餌性感染症を見逃さないようにしよう!ということです。 安易に風邪という診断にはなさらない方が良いと思います。。。
実際、僕は感染した自分の便をグラム染色してみたんですが、、、
どこに菌体がいるかわかります?Gull wing(カモメの翼)
僕が同定できる限りはこれらかなぁと思います。
なので、Campylobacterを探すコツとしては
・「Gull wingとはなんぞや?」を知っておく
・それを頭に浮かべながらプレパラートを見る
ことが重要です。
Campylobacterの便グラム染色については、 日本からの報告があります。 急性下痢を起こした患者の便64検体における検討で感度58%、 特異度88%、陽性尤度比5.02(95%C.I.:1.67- 15.05)、陰性尤度比0.48(95%C.I.:0.32- 0.71)とあります。ですので、 他の多くのグラム染色研究と同じく、 特異性は高いですがそれだけでの除外は難しいです(文献1: General Medicine, 10(1), 17-21, 2009.)。
ちなみに、まれながらCampylobacter jejuni/coli infectionは菌血症を起こし ます。デンマークの研究ではその頻度は10万人あたり2. 9人と低く、 発生率は80代でピークを迎えると報告されています(文献2: Clin Microbiol Infect . 2010 Jan;16(1):57-61. )。
Sepsisで入院したCampylobacter bacteremia46例(jejuni: 37例・ coli: 5例・fetus: 3例・lari: 1例)と、 sepsisだったが血液培養陰性だった102例を比較すると、 菌血症を起こすリスク因子として挙がるのは
・Charlson comorbidity indexが高い、すなわち併存疾患が多い
・アルコール依存
・過去の消化管手術歴
・免疫抑制治療中
があがります。ですので、 これらの因子を有している患者においては血液培養をしておいたほ うが無難かもしれません。
4)Campylobacter jejuni/coli infectionの治療方法
治療はどうするべきでしょうか?
抗菌薬を使用するか否かを調べたRCTのmeta- analysisでは1.3日のみ症状期間を短くするだけ( 95% CI 0.6-2.0 days)で、症状出現から3日以上経てば内服の効果はないとし ています(文献3:Clin Infect Dis . 2007 Mar 1;44(5):696-700. )
また、基本的には自然軽快する病気なので、
・とても重症な症状
・血便
・高熱
・腸管外感染(菌血症、たまに大動脈感染、などなど)
・症状が1週間以上続く方
・高齢者、妊娠、免疫不全
こういう状況でなければ抗菌薬を使用しなくても良いとされていま す(By Clinical manifestations, diagnosis, and treatment of Campylobacter infection. uptodate 2021)。
抗菌薬は
First line:アジスロマイシン
Second line:キノロン
Third line:ドキシサイクリン
です。 ただしキノロンは家畜に頻繁に使用されていることから耐性化が進 んでおり、基本的な抗菌薬使用はアジスロ一択です。
ちなみに、「 campylobacterが見えていないのに細菌性腸炎にたい して抗菌薬を処方してよいか?」については、 僕は基本的にはしないほうがいいと思います。
①非重症のサルモネラ感染症の患者の場合、 抗菌薬使用は症状を短くさせないばかりか(文献4: Cochrane Database Syst Rev. 2012 Nov 14;11:CD001167.)、 排菌期間を延長させる結果となった(文献5:Clin Infect Dis. 2016 Apr;62(7):879-86.)。
②腸管出血性大腸菌(Enterohemorrheagic E.coli; EHEC)の場合、抗菌薬使用が溶血性尿毒素症候群( Hemolytic Uremic Syndrome; HUS)に移行させるリスクが高まる( Pediatr Infect Dis J. 2012 Jan;31(1):37-41. )
だからこそ、僕は、自分自身の便をグラム染色で確認し、 gullwingを確定してから治療したい! と思ったわけですねぇ。
じゃあ、当時の僕は抗菌薬治療をどうしたか?というと、
・38度を超える発熱があった
・下痢は1日10日を超えていた
・血便も1回あった
・2日後に内科当直、、、
という観点からやむなく抗菌薬使用に踏み切りました( アジスロマイシン)。 熱は内服翌々日から下がってかなり元気になり、 内科当直には間に合いました。あーよかった。。。
というわけで、Take home messageは下記です。
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①急な発熱のみの場合に、campylobacter colitisは
頭をかすめておく。生肉摂取の病歴取得を忘れないこと!
②便のグラム染色でGullwingが見えたらcampyloba cter!
③抗菌薬治療は重症者や高齢者・妊娠・ 免疫不全者では
考慮するが、それ以外であれば抗菌薬は不要
(ただし状況に合わせて考慮)
④便グラム染色でgullwingが見えていないのに
抗菌薬で治療す るのは危険
サルモネラは排菌期間延長!EHECはHUSリスク上昇!
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